2020/08/15  2020/08/15

体験談

検診・健診クリニックで働く看護師の仕事内容は?実際に働いて感じたこと

 

はじめに

よく間違われる「健診」と「検診」。まずは、2つの違いから説明します。

健診(健康診断)は個人の健康の確認と病気の早期発見を目的としています。
また、2008年から始まった特定健康診査(特定健診)は、病気の一歩手前の人も含め保健指導が必要な人を選び出し、病気を予防することが目的です。

検診は、がんや骨粗しょう症、歯周病など、ある特定の病気の発見を目的としています。「検診」の場合は「乳がん検診」「大腸がん検診」「骨粗しょう症検診」「歯周疾患検診」など、病気の名前がついているのが特徴です。

今回は、検診・健診クリニックでの実際の仕事内容を詳しく紹介していきたいと思います。

検診、健診クリニックで働いてみたい方

「検診・健診クリニックでの仕事は、どんなことをするのだろう」と思った方

転職を検討されている方

は、是非読んでみてください。

検診・健診の紹介

勤務時間

多くの場合、日中の8:30~17:30頃までの勤務になります。勤務先によっては、午前中のみの場合もあります。

受診者人数

受診される方の人数は、1日80~100人程。

働くスタッフ

看護師の他に医師・保健師・検査技師・受付事務の方がいます。

スタッフの年齢層は30代~50代の方が多いですが、最近では20代のスタッフも少しずつ増えてきています。

常勤で務めている方もいれば、扶養内でパートとして働いている方もいます。

給料

平均190,000円程(月給)、時給は1,600~1,800円程。

※給料は地域によって多少バラつきがあります。

採血担当になると、時給が100円程上がる場合もあります。

仕事内容

血圧・問診、採血、尿検査、身長・体重・体脂肪・腹囲測定、視力、眼底・眼圧、心電図、肺機能、聴力、胃部X-P介助、婦人科介助、骨密度、健康相談、診察介助など。

検査技師がいるところでは、検査技師が、聴力、心電図、眼底・眼圧、肺機能を担当してくれる場合があります。

検査技師の人数が少ない時や繁忙期の時は、看護師が行うこともあるので、出来るように準備しておく必要があります。

さらに具体的な仕事内容は、後ほど紹介していきます。

巡回健診

健診の仕事の一つとして、巡回健診があります。巡回の場合は、健診車で指定された会場に向かうため、朝の集合時間が早くなります。

看護師の他に医師・検査技師などが一緒に同行することが多いです。

会場に着いたら会場のセッティングやブースづくりを素早く行い、健診終了後は、会場をきれいに元通りに直して終了になります。

私が働いていた勤務先では、クリニック内チームと、巡回健診チームの2つに分かれていました。自分の希望するチームに配属してくれましたが、勤務先によっては月ごとにローテーションすることもあるようです。

検診・健診で働くメリット

・日勤のみで、基本定時で上がれる
・体力はそんなにいらない
・命に関わるような医療行為はない
・ルーティンワークのため、淡々とこなせる
・接遇マナーが身につく

検診・健診で働くデメリット

・ルーティンワークのため、単純作業でつまらないと感じる
・クレームが日常茶飯事
・病棟に比べて給料水準が低い

向いている人

・採血が得意な人
・ルーティンワークが得意な人
・クレーム処理が苦痛にならない人
・おもてなしの心がある人

不向きの人

・採血が不得意な人
・患者さんとじっくりと向き合って看護をしたい人
・おもてなしの心を持っていない人
・クレーム対応が苦手な人

受診される方は患者様ではなく、お客様扱いになります。病棟でも「接遇マナーに気を付けてください」と上司から言われていると思いますが、それ以上に厳しくなります。

サービス業と同じようなものなので、入職すると接遇マニュアルをもらえます。マニュアルの中には、「おもてなしの心」を大切に、しっかりとやっていきましょうと書かれています。

検診・健診の仕事内容

1 血圧・問診

電動血圧計を使って血圧を測ります。基準値によって再測定をします(130/85以上、90/40以下は再測定等)

問診は記入漏れがないかを確認します。

【ポイント】

・「いつも家で測っているけど、その値と誤差がある」と訴えてくる人もいるため、時間や場所、体位によっても値は変動することを伝える。

・お客様が帰った後、問診の記入漏れが見つかった場合は、後ほど電話連絡をすることになる。そうならないために、しっかりと記入漏れがないか確認する必要がある。

2 採血

採血セットは翼状針と注射器の準備もありますが、基本、真空管で行います。

健診での採血は、スピードと正確さが命になります。また、健診の中で、唯一お客様の身体にキズをつけ、痛みを与えることから、その行為にマイナス評価を受けやすいものでクレームが一番多いブースになります。

【ポイント】

・繁忙期は採血ブースに長蛇の列ができ、焦る時もありますが自分のペースで行うことが重要。

・指先に痛みやしびれの訴えがあった時は、すぐに抜針をする。

・お客様は常に採血に対する不安、心配がある。それらの心情を受け止め、いつでも相談にのるという受容の気持ちで接することが大事。

3 尿検査

全てのお客様の検体をウロペーパーや尿比重計を用いて、チェックしていきます。基本、蛋白・潜血・糖の3種をウロペーパーでチェックをします。

【ポイント】

・判定に迷ったら、他のスタッフにもチェックしてもらう。

・項目があれば、尿比重測定、尿沈査・尿成分のスピッツづくりを行う。

4 身長・体重・体脂肪・腹囲測定

特に女性は、羞恥心を伴う検査のため、カーテンやパーテーションなどでプライバシーに配慮して素早く行う必要があります。
 

【ポイント】

・髪を結わっている場合はほどく、髪留め、髪飾りは外してもらう。

・体脂肪測定の場合、ペースメーカーの装着有無の確認をする。

・メタボリックシンドロームやBMIに関して聞かれることが多いので答えられるようにしておく。

5 視力

一般的には遠視の検査をします。(一定の要件を満たす人については後述の眼底・眼圧検査を行います。)

【ポイント】

・裸眼orメガネorコンタクトの確認をする。近年、レーシックのお客様が増えてきているので、裸眼でも必ず確認する。

・仕事の時の状態で測定するのが原則。

・遠近両用メガネの方は検査時にどちらのレンズでみればよいか声をかける。

6 眼底・眼圧

基本的には、検査技師が行います。もっとも、検査技師が不在の時や、繁忙期には、ナースが行うこともあります。

【ポイント】

・基本、裸眼で行うためコンタクトレンズの装着がないか確認をする。

・眼疾患の既往がある場合は把握しておく。

・フラッシュをたく眩しい検査であることを説明する(眼底検査)

・空気を目に吹き付ける検査であることを説明をする(眼圧検査)

7 心電図

基本的には、検査技師が行います。もっとも、検査技師が不在の時や、繁忙期には、ナースが行うこともあります。

波形に筋電図が入っていないか、基線がゆれていないか、異常所見がないかを確認します。

【ポイント】

・胸を出してもらうのでプライバシーの配慮が必要。

・すばやく四肢・胸部誘導を付けることが大事。

8 肺機能

基本的には、検査技師が行います。もっとも、検査技師が不在の時や、繁忙期には、ナースが行うこともあります。

【ポイント】

・検査を進めるうえで声掛けが重要。声かけのタイミングで検査の正確性が決まる。

・咳がある人は正確な値が出ないため、医師と検査を行うかの相談をする。

・呼吸を何度か繰り返す検査のため、息苦しくなる人もいるので注意する。

9 聴力

個室に入り、ヘッドホンを着用してもらい、検査を行います。

【ポイント】

・メガネの人はメガネを外して、ヘッドホンがひっかからないようにする。

・耳に髪の毛がかかっている人は、耳を出してヘッドホンを装着するように声をかける。

・難聴の人もいるため検査をする前に情報を取っておく。

10 胃X-P介助

お客様に「我慢するのがきつい」と言われる検査No.1です。スムーズに検査できるように配慮していく必要があります。

【ポイント】

・バリウムを作る水が冷たすぎると腸に流れていく時間が早くなるので、注意する。

・発泡剤を口に含んでもらい、消泡剤入りの水で一気に流してもらう。

・発泡剤を飲むのが苦手な人には、消泡液ではなくバリウムで発泡剤を飲んでもらうと飲みやすくなる。

11 婦人科介助

乳がん検診と子宮がん検診を行います。女性にとって一番プライバシーに配慮しなければならない検査です。

【ポイント】

・診察台に上がり検査を受けるときは、カーテンで検査状況が見えないので説明をしっかりする。

・プライバシーに配慮し、短時間で終えるよう医師と協力をする。

12 骨密度

骨の中にカルシウムなどミネラルがどの程度あるかを測定します。骨の健康を知る上で重要な手掛かりとなるため、女性は40歳以上になったら定期的に測定することを推奨しています。
 

【ポイント】

・痛みがある検査だと思っている人がいるため、痛くない検査であることを説明する。

・踵の測定部に超音波ゼリーを500円玉程度の広さで塗布する。

・測定後、結果説明をする際に、強い骨を作るには「食生活」「運動」「日光浴」が必要であることを説明する。

13 健康相談(保健師指導)

保健師の資格を持っている人が行います。

【ポイント】

・患者さんに合わせて説明をしていく必要がある。

14 診察介助

すべての検査が終了し、最後に医師の診察になります。お客様の不安や疑問を解決できるように関わっていきます。

【ポイント】
・診察がスムーズに進むようにご案内・診察介助をする。

まとめ

検診・健診業務は、クレーム処理が苦痛にならず、かつルーティンワークが好きな方に向いている。

日中だけの仕事になるので、規則正しい生活が送れる。

クリニック内での働き場所の他に、巡回健診もある。

病院と比べると、給料は下がる。

病院で見たことがあるけど、実際にはやったことがない検査などを経験することができるので、初めてのことが好きな人は、楽しいと感じるかもしれません。