2020/06/21  2020/07/25

コラム

専門看護師(CNS)とは?

近年、需要が高まってきている専門看護師。現在は、全国で2479人(2020年6月24 日本看護協会調べ)が専門看護師として登録しています。

「専門看護師ってどうやったらなれるの?」、「なるための日数と費用はどれくらいかかるの?」、「給料は上がるの?」と思う方は多いと思います。

そんな方々に向けて、医療現場のエキスパート「専門看護師」の資格取得までのノウハウと、みなさんが気になることをお伝えします。

専門看護師とは

専門看護師制度は、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上をはかることを目的としています。(出典:日本看護協会)

専門看護師(英: Certified Nurse Specialist、略称:CNS)

専門看護師の役割

専門看護分野において以下の6つの役割を果たします。

1 実践

個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する。

2 相談

看護者を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う。

3 調整

必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う。

4 倫理調整

個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決を図る。

5 教育

看護者に対しケアを向上させるため教育的役割を果たす。

6 研究

専門知識及び技術の向上並びに開発を図るために実践の場における研究活動を行う。

専門分野と特徴

特定されている分野は以下の13分野があります。

※各専門看護師の登録者数(2020.6.24現在)

がん看護

がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対してQOL(生活の質)の視点に立った水準の高い看護を提供する。

 がん看護の登録者情報
登録者数

 881人

所属部署・病棟284人
・外来152人
・看護管理部152人
・その他(在宅部門など)
職位別・スタッフナース334人
・師長130人
・主任116人
・その他(副看護部長など)

精神看護

精神疾患患者に対して水準の高い看護を提供する。また、一般病院でも心のケアを行う「リエゾン精神看護」の役割を提供する。

 精神看護の登録者情報
登録者数 341人
所属部署・病棟127人
・看護管理部75人
・外来32人
・その他(在宅部門など)
職位別・スタッフナース126人
・師長44人
・主任38人
・その他(副師長など)

地域看護 

産業保健、学校保健、保健行政、在宅ケアのいずれかの領域において水準の高い看護を提供し、地域の保健医療福祉の発展に貢献する。

 地域看護の登録者情報
登録者数 27人
所属部署・訪問看護ステーション2人
・看護管理部1人
・外来1人
・その他(在宅部門など)
職位別・スタッフナース2人
・副師長1人
・主任1人
・その他(教育機関関連者など)

老人看護 

高齢者が入院・入所・利用する施設において、認知症や嚥下障害などをはじめとする複雑な健康問題を持つ高齢者のQOLを向上させるために水準の高い看護を提供する。

 老人看護の登録者情報
登録者数 181人
所属部署・病棟79人
・看護管理部25人
・外来8人
・その他(救命救急センターなど)
職位別・スタッフナース62人
・主任26人
・師長21人
・その他(副師長など)

小児看護 

子どもたちが健やかに成長・発達していけるように療養生活を支援し、他の医療スタッフと連携して水準の高い看護を提供する。

 小児看護の登録者情報
登録者数 254人
所属部署・病棟122人
・外来27人
・看護管理部14人
・その他(ICU・CCU・HCUなど)
職位別・スタッフナース122人
・主任30人
・副師長17人
・その他(師長など)

母性看護 

女性と母子に対する専門看護を行う。主たる役割は、周産期母子援助、女性の健康への援助に分けられる。

 母性看護の登録者情報
登録者数 80人
所属部署・病棟56人
・外来7人
・看護管理部6人
・その他(学校・大学など)
職位別・スタッフナース34人
・主任12人
・師長10人
・その他(副師長など)

慢性疾患看護 

生活習慣病の予防や、慢性的な心身の不調とともに生きる人々に対する慢性疾患の管理、健康増進、療養支援などに関する水準の高い看護を行う。

 慢性疾患看護の登録者情報
登録者数 206人
所属部署・病棟75人
・外来43人
・看護管理部27人
・その他(在宅部門など)
職位別・スタッフナース85人
・主任28人
・師長25人
・その他(副師長など)

急性、重症患者看護 

緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供し、患者本人とその家族の支援、医療スタッフ間の調整などを行い、最善の医療が提供されるよう支援する。

 急性、重症患者看護の登録者情報
登録者数 271人
所属部署・ICU・CCU・HCU117人
・救命救急センター59人
・看護管理部30人
・その他(病棟など)
職位別・スタッフナース116人
・主任40人
・師長37人
・その他(副師長など)

感染症看護 

施設や地域における個人や集団の感染予防と発生時の適切な対策に従事するとともに感染症の患者に対して水準の高い看護を提供する。 

 感染症看護の登録者情報
登録者数 77人
所属部署・病棟14人
・看護管理部6人
・ICU・CCU・HCU4人
・その他(手術室など)
職位別・スタッフナース28人
・師長13人
・主任11人
・その他(副看護部長など)

家族支援

患者の回復を促進するために家族を支援する。患者を含む家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的、精神的、社会的に支援し、水準の高い看護を提供する。

 家族支援の登録者情報
登録者数 69人
所属部署・病棟26人
・外来9人
・看護管理部6人
・その他(救命救急センターなど)
職位別・スタッフナース30人
・師長8人
・主任8人
・その他(副師長など)

在宅看護 

在宅で療養する対象者及びその家族が、個々の生活の場で日常生活を送りながら在宅療養を続けることを支援する。また、在宅看護における新たなケアシステムの構築や既存のケアサービスの連携促進を図り、水準の高い看護を提供する。

 在宅看護の登録者情報
登録者数 67人
所属部署・在宅部門13人
・看護管理部2人
・外来1人
・その他(学校など)
職位別・スタッフナース9人
・師長6人
・主任3人
・その他(副師長など)

遺伝看護 

対象者の遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定支援とQOL向上を目指した生涯にわたる療養生活支援を行い、世代を超えて必要な医療・ケアを受けることができる体制の構築とゲノム医療の発展に貢献する。

 遺伝看護の登録者情報
登録者数 5人
所属部署・病棟3人
・外来2人
職位別・スタッフナース3人
・主任2人

災害看護 

災害の特性をふまえ、限られた人的・物的資源の中でメンタルヘルスを含む適切な看護を提供する。平時から多職種や行政等と連携・協働し、減災・防災体制の構築と災害看護の発展に貢献する。

 災害看護の登録者情報
登録者数 19人
所属部署・病棟3人
・救命救急センター2人
・ICU・CCU・HCU2人
・その他(手術室など)
職位別・主任4人
・スタッフ3人
・師長3人
・その他(副師長など)

専門看護師になるには

専門看護師への道は、大きく分けて以下の6つのステップがあります。

1 看護師免許の取得

2 看護系大学院修士課程修了者で日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位(総計26単位または38単位)を取得していること

3 実務研修が通算5年以上あり、うち3年以上は専門看護分野の実務研修であること

4 認定審査(書類審査・筆記試験)

5 専門看護師認定証交付・登録

6 5年ごとに更新(看護実践の実績、研修実績、研究業績等書類審査)

「2」の所定の単位が取得できる大学院は全国に多数あります。学校によって入学金や受講料、学べる専門分野が違うため、しっかりと確認しておく必要があります。

資格を取るのに必要な日数

専門看護師資格を取得するには、修士課程を修了することが要件となっています。そのため、2年間大学院に通い単位を取得する必要があります。

就学中は、常勤職員として所属していた施設で就労する方もいますが、休職・退職をする人が多いようです。

資格を取るのに必要な費用

学校によって入学金や受講料に違いがあるので、あわせて確認しておきましょう。

 一般的な入学金・授業料等 (1年間)
入学検定料              3万円
入学金          20万円
授業料          55万円
実験実習費              5万円
認定審査料              5万円
登録料              5万円
合計          93万円

 

1年間で合計93万円程はかかるので、2年間になると186万円程かかる計算になります。(便宜上単純に2倍しています。)

また、近隣に通いたい大学院がない場合は、引っ越しをしなくてはなりません。そうすると必然的に引っ越し代金や、家賃なども必要になります。

トータルするとかなり費用はかかりますが、病院の支援制度や各種奨学金を利用することで自己負担を軽減することができます。まずは自分の施設の支援内容を調べてみるのをおすすめします。

ちなみに就学中に、所属していた施設で就労していた人や休職扱いの人の賃金は、「基本給の全額支給」、「基本給の一部支給」を受けていた方が多いようです。休職扱いで基本給がもらえるのは、資格を目指す人にとってはありがたい話です。

更新の必要性

5年ごとに更新が必要になります。(看護実践と自己研鑽の実績について書類審査)

更新時に、審査料と登録料を含め5万円がかかります。

資格取得後の待遇

医療機関によっては認定後に昇格・昇給・手当が支給されるところもあります。

資格の有無により基本給そのものが変わることはありませんが、その代わり有資格手当(数千円~2万円程度)がつくことで、総手取額が増えるケースが多いです。

有資格手当としては「5,000~1 万円未満」が最も平均的であることが日本看護協会の調査でわかっています。

まとめ

専門分野は13種類。

専門看護師への道は、2年間の日数と、190万円程の費用がかかる。

資格の更新は5年毎に5万円かかる。

資格取得後は有資格手当として5,000~1万円がつく。

専門看護師の道のりは、並大抵のものではありませんが、その分やりがいも増えて自分のスキルアップにも繋がります。

自分が「挑戦してみたい!」と思ったときが、始め時かもしれません。